犬とのひっぱりこで、犬からオモチャを取り上げる古武術の応用
犬との引っぱりっこ遊びで、熱くなってお互いにぐいぐいと楽しくひっぱりあった後、軽く冷静な「はなせ」のコマンドで犬からひっぱりおもちゃを回収することが出来ると、周りから尊敬されます。それが初対面のワンちゃんだったりすると、その飼い主さんからそれこそ、「この人、犬としゃべれるの?」なんて不思議がられます。
でもこれって、ある程度のレベルの犬のトレーナーならきっと割と自然にできるテクニックです。
私はそれが出来るようになってから甲野善紀さんの本を読んで古武術の知識を得たので、「これでうまく説明できるじゃん!」と感動しました。
本によると、「ただそえるだけ」というテクニックがあります。
例えばラグビーのタックルを止めるには、当たる瞬間に相手に手を添えて、そのまま相手に合わせて体も添えるように一緒にバックするんです。
すると相手は、まさに「のれんに腕押し」の様になって力が抜けちゃいます。
この場合、相手が速く強いほど効果があるようです。相手が自分で自分にかけるブレーキも強くなるからです。
同じことを私は、ヒグマのショー中にも偶然やっていました。クマは年を取るとどんどんゆったりとマイペースになるので、わざとほんの少しちょっかいを出してこの方法でなだめることもしていました。
犬の場合。やはり、引っぱりっこが強い方が落差があって成功しやすいです。あんなに強く引っぱっていたのにではなく、強く引っぱっていたからこそ、なんです。強く引っぱっていたものを、急に力を弱めます。そして、どこまでも添えるだけの感じでついていく気持ちになります。
すると犬は、やはりのれんに腕押し状態になって力が抜けるのです。抜けたかどうかというタイミングでさらに冷静に「はなせ」というと、つかみどころがない相手の情報が欲しいと思っている犬が、少し音を聞くことに意識を奪われるので、さらに離しやすくなります。
古武術に出会う前は「生きていた獲物が、死んだと分かったら離すものだよ。そういう演技をするの。」なんて説明していましたが。
体の使い方と共に、そういう冷静さを頭の中に持って相手と勝負する、相手に合わせつつ裏をかくというこの感情コントロールが一番大切なんです。
でも、偉そうに書いていますが、私もこれでどんな犬もどんな時も100%成功するまでには、当然、至っていません。つい「こら、はなせ!」なんて強引に引っ張っちゃうときもありますし。
甲野さんがすごいのは、ちゃんと体得したものを理屈になおしているところと、それを忘れるどころか繰り返して進化し続けているところなのですね。
ちなみにコツがつかみづらい方は、むしろ少しだけおもちゃを押して犬の口に入れる気持ちでやってみてください。「引いてダメなら押してみる」、です。