Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

行動分析学 負の強化と「馬と話す男」

私の大好きな本の一つ、「馬と話す男」

動物の(馬の)ささやきが聞こえるという、「ホースウィスパラー」という言葉は、この本がきっかけで知りました。

 

この本の著者、モンティ=ロバーツさんは、丸い柵の中にいる全く訓練未経験の馬を、一時間くらいで馴らして鞍をつけて乗れるようにしちゃうんです。

エリザベス女王の前でもこの技を披露したという全く新しく平和的なこの訓練、実は行動分析学ではあまり好ましくないとされる、「負の強化」の究極の技なんです。

私の尊敬する北九州のカリスマドッグトレーナーAさんは、「逆もまた真なり」という言葉をよく使われます。まさにこれです。

 

正の強化と負の強化、正の罰、このへんがものすごくややこしいんですが、負の強化に限ると、それは、「叱る」ことではないんです。

 「すでに不快な状態にあり、その状態から解放されることがご褒美となる。」…これ、超重要です。

 

モンティロバーツさんのやり方は、サークル内にいる馬に近づいて、初めに軽く馬を追うんです。

「あっちにいけ、しっしっ、オレに近づくな」と。

すると馬の方も、自分がエネルギーを浪費しすぎないよう、ギリギリの感じで人を寄せ付けないように軽く走って逃げます。

15分くらいそんな追いかけっこをしていると、馬の方がもう許してほしくなります。そんなタイミングを見計らって、馬から離れるように動くと、「許してくれたの?」と、馬の方から近づいてくるのです。

近づいてきた馬に触ろうとすると、また逃げます。逃げたら、最初の追いかけっこに戻ります。

これに根負けした馬は、とうとう人間を触らせます。

最終的には、鞍をつけて乗ってしまいます。

 

まさに負の強化のお手本です。追いかけられる弱く持続したプレッシャーから解放された瞬間がご褒美。そのご褒美をくれたのはモンティさんだから、モンティさんは馬にとって、専門用語でいう「快」なんですね。

 

 ちなみにこの感じは、昔気質の動物トレーナーの得意技です。ただ、もっとはっきりしています。ぐっ、と動物に近づいてプレッシャー(威圧)を与え、すぐに威圧をといて2歩くらい後退すると、動物が吸い込まれるようについてくるのです。私のマニアック表現では「自然界は真空を嫌うことの一つの証明」と言います。

 

こういった、叱ること、威圧を与えることに対してしっかり取り組んで研究すれば、もっと実学としての行動分析学が進むのではないかと思うのですが、やはり動物に対してのネガティブな取り組みは否定されがちですね。

犬のトレーニング本も、「ほめてしつけるナントカ」みたいな内容しか売れない時代だともいわれます。

 しかし、よくよく考えてみたら、なれていない動物を馴らそうとする行為は、負の強化そのものとも言えます。

例えば、犬の訓練士さんが問題犬を矯正のために3ヶ月預かるとします。それは、飼い主と家から切り離された不安の不快感をまず与えて、訓練士への依存を高めさせる負の強化を用いているとも言えなくはありません。それがヘタすると預かり期間の大半だったりします。

 

もっと言えば、生き物が生きる行為はすべて負の強化。

食べるという行為は、ご褒美とも言えますが、食べていない時の空腹から解放されるという感覚が、もともとあったはずです。

食べなきゃ死んじゃうという条件では、食べることは死のプレッシャーからの開放ということもできます。

 

行動分析学から話が意外な方向に来ちゃいましたが、私は「全否定」がきらいなんですね。

もちろん、全否定する人を全否定ましせんが、例えばタバコの是非とかの話をしだすと、現在の私はタバコを全く吸いませんが、吸う人の気持ちもわかろうと努力しないことには、より良い社会は築けないと思います。

 

ギリギリ、行動分析学と言えるかな?というような内容は、ほぼ、これで一区切りついたと思います。

 罰とかについては、ちょっと気楽には書けません。一番難しいことだと思います。一番、副作用が強いからです。

 

あとは、用語の概念とかでしょうか。

「間欠強化」なども私はすごく大事なことだと思っていますが、わざわざ行動分析学と言わないでも、徐々にトレーニングカテゴリーで書いていくことになると思います。

ただ、改めて「上手くやるための強化の原理」を読んだら、負の強化以外で私が書ける事なんてないんじゃないか、という気もしてきました…

たまーに、トレーニング用語に絡めた話も書くと思いますが、本題のアニマリュージョンネタ少なすぎますものね。

 中途半端ですみません。

馬と話す男―サラブレッドの心をつかむ世界的調教師モンテイ・ロバーツの半生

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