頭を悩ませる毛引きの話 コンゴウインコ編
オウムやインコを飼育する上で、よくある問題の一つに毛引きがあります。
動物トレーナーとして痛感するのは、動物に良いクセをつけることも難しいですが、悪い癖をつけちゃったものを直すことはもうその5倍から10倍くらい難しいということです。場合によってはもう修復不可能です。
木のおもちゃを器用に足でつかんで遊ぶ山ちゃん
毛引きはもう、その意味では本当にやっかいな問題です。
寄生虫や栄養不足や環境等いろいろ原因はあるのでしょうが、動物園では動物飼育のプロたちが飼うのですから、そういった外的要因はほとんど可能性を潰すことができます。
すると残るのが、「ストレス」しかないんですね。
動物飼育上のいろんな問題行動に関しては、他人様から何気ない一言の「ストレス」でかたづけられちゃうともう、ディスられてる(けなされてる)に等しいんです。自分が担当している動物が、誰の目から見ても明らかなストレス環境にさらされているっていう目印みたいなものなのですから、そりゃあもう。精神衛生上もよくありません。逆にまじめな飼育員さんにとってのストレスに他なりません。
もちろん、中には真面目でなくてちゃんと管理しない人や業者もいるので一概に全部濡れ衣だとは言えないのですが、毛引きをする鳥は、どんなに頑張ってみても治らないくらい完全に癖になっている個体がいるのも事実です。
アニマリュージョン!ショーには3羽のコンゴウインコが登場します。
同時に舞台に上がるシーンがあるのは2羽だけですが、「山ちゃん」「ちびちゃん」「カドリー」の3羽がいます。
そのうちで一番体が大きいオスの「山ちゃん」はもうケビキが完全にクセになっています。
私の知っている範囲では、コンゴウインコは、体を覆う羽毛を抜きます。まさに、「抜く」という感じです。だから毛穴から血がにじんで、カサブタになります。
これをしつこく繰り返すものだから重症になるともう、最後には毛穴がなくなってしまって新しい羽毛が生えなくなります。
かたやオウムのキバタンは、抜くというより齧って途中からちぎってしまう感じです。噛みごたえ重視だからなのか、比較的、小さな体の羽毛ではなくて大きな翼の羽根の軸を噛み切ることが多いようです。
山ちゃんは、普段は翼に隠れて見えない背中と腰のあたりを抜きまくっていて、もう生えてこなくなった毛穴もたくさんあるようです。
私がこの山ちゃんを初めて担当した時は、前任者がやめてからほんのしばらく、担当者不在のような状態の期間がありました。ほんの何日かですが、その間にケビキがさらにひどくなり、背中と腰の毛がほとんどなくなってしまったようなのです。
私にとってはそのケビキを治すのも課題の一つだったのですが、やはり完全には治りませんでした。ただ、少し症状が改善にした時に初めて、腰に黄色い羽毛が生えていることに気がつきました。
ということは山ちゃんは、推測ですがベニコンゴウインコとアカコンゴウインコのハイブリッドなんです。ベニコンには、黄色い羽はありません。アカコンは赤い部分がとても明るく鮮やかで、さらにベニコンよりサイズが一回り小さいんです。
山ちゃんはカドリーのベニコンの中でも一番大きいですから、アカコンではないのは確かです。
アカコンゴウインコは一般的なイラスト、特に色鉛筆のセットのカバーデザインとかにもなるような本当に色鮮やかで奇麗な、美しい鳥です。
これに比べちゃうと、ベニコンゴウインコはなんだかくすんだ感じがしてきちゃいます。赤い部分も、アカコンゴウインコはベニコンに比べて明るいんです。
だからますます、その綺麗さを再現できない原因である毛引きと、それを完全には治せないことがストレスになっちゃいます・・・