Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

ペンギン訓練の思い出 その5 マテとオイデのベクトルの違い

さて、今回の主題は「ベクトル」です。ペンギンに対して近づく方向性がマテ、遠ざかる方向性がオイデ。ここでいう「ベクトル」とは、物理用語のエネルギーの方向性のことです。私は理数系が超苦手なので正しい理解ではないかもしれません。

それでもわざわざ物理用語を使うのは、そういう大事な考え方があるからです。「方向性を持ったエネルギー」という概念がまさにイメージぴったりなので使っています。

 

動物訓練における大事なセンスの一つは、なんとなくでもこういった方向性を意識できるかです。すごく難しい話をしているように思われるでしょうが、センスのない人は犬に対して、「オイデ」と言いながらも自ら犬に近づいてプレッシャーを与えてしまいます。動物どころか人間同士で話をする時だって、やけに距離が近い人とか、真正面からじっと眼を見てくる人がいますよね。

 

 ほんの少しでもペンギンに対して向かっていく方向に意識があれば、それはマテを表し、逆ならオイデです。そして大事なのは方向エネルギーを常に自分の中に少し残しておくこと。動物に対して手のひらをかざすように「マテ」とやるとき、気合が入りすぎて腕を伸ばしきり、さらにバランスを取る為に腰までひけてしまうと、もうそれで内在するベクトルエネルギーはゼロかマイナスになります。

同じ手のひらを、胸の近くからゆっくり10数えながらだんだん伸ばしていけば、10秒はベクトルエネルギーが出続けるので、待たせることができるという理屈です。

 

特にベクトルと表現するのは、これは相対的な効果があるからです。

というのは、以前説明したように手の方を残す要領で手の平をペンギンにかざすようにしながら体の方を下げてバックしても、ペンギンに対して手のひらからベクトルマテエネルギーが放射されるんです。いや、気功とか手かざしとか、光や金粉が出るとかの話じゃないですよ。

目の錯覚みたいなものですよ。体が下がっているだけなのに、手が近づいてくるように感じるんです。

 

体というか、体幹も同じような使い方ができます。普通に歩いてペンギンに近づけばもちろんそれは「マテ」ですが、ここで大切なのは腰の重心移動です。足を一歩の歩幅くらい前後に開いて、後側の足から前側の足にゆっくり体重移動していきます。

体重移動している間がマテです。足の位置は移動していないのに、なんだか近づいてくるような錯覚を与えるのです。細かいコツを言えば、膝でなく腰中心で動くことですね。

 

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私はトレーナーの動きについ目が行っちゃいます。ただし、もちろん、ショー中にはあれこれ理屈を考えるのではなく、動物が動くことが最優先です。このペンギンの列は見事です。

 

こういうことを人に分かりやすく説明したいがために極端な動きで説明すると、太極拳の足運びそっくりになります。当時は逆に「太極拳って、そういうことかな」と、太極拳を学びたくなるくらいな気持ちになったものでした。

 

これを応用して、私はさらに自分の動きに磨きをかけてみました。

多分文章では理解できないでしょうが、マテの手を残しながら体をゆっくり下げ、手が伸び切る前にシュッと素早く手を腰に隠して、すぐに腰を意識させるように体の体重移動を見せ、また手と体幹を入れ替えるように手でマテをしながらゆっくり下がるを繰り返すと、どんどん対象と距離を開けられるんです。3mくらいはあっという間です。

こうなるともはや、催眠術のようです。ただ、一応書いてはいますが、今、それをやれと言われてももう精度が落ちているでしょうね。当時は大人のヒグマとショーもしていて、おちゃらけてはいましたがある意味命をかけていましたから。また、それがそこまでできるから何だという話です。ショーというのは総合的なものですからね。格闘家が、試合で勝てないけど筋力だけは誰にも負けないと自慢するようなものです。

 

話はどんどん飛びますが、合気道では、ある程度修行して気がわかるようにならないとお互いの技がかからないといいます。ということは、先生にうまく投げられるようになるまで訓練が必要という、なんだか矛盾した武道です。しかし、こういうベクトルや体の使い方を強く意識してペンギン訓練をすると、身体意識というペンギンとの共通の言語ができたような感じがしてきます。

この共通の言語に当たる身体意識。合気のことはよくわかりませんが、何かヒントがあるなとは感じます。「身体意識」はいずれ詳しくご説明します。

 

・・・みなさん、ついてきてます?

まだ、続きますよ。

あれ? 誰もいない(笑)。