ペンギン訓練の思い出 その8 群れで動くペンギンにイケの合図を作るには身体意識が必要
だんだん長い連載になってきてしまいましたペンギン訓練の思い出。
今回はその8ですが、前回レジュメをはさんだので実質その9です。
まだ続きます。たとえ読む人がいなくても(笑)。
イケの合図を作るには、ゴールの対象物が必要です。しかし、行くべき対象があるのに行かせないというのは、かなり高度な技術である割に活用が難しいです。例えば、当時からペンギン達は滑り台まで階段を登って行くことができましたが、階段を登らせないようストップをかける合図はありませんでした。でも、階段の手前を封鎖しておけば登れないのですから、それで不都合はありません。
そんなわけで、イケの合図を活用する芸は、ステージの左右に置いたパイロン(またはポール)を回って帰ってくる8の字走行に決めました。
最初からパイロンがあっても合図がないと行かないこと、それも目標の一つです。
最終的にこの芸というかネタになったパイロン往復の過去の行動形成の話です。
クマに自転車乗り等を教えた時のラインどりの知識と技術の応用でもあります。
というか、もともとがこのペンギンを2足歩行のクマに置き換えても同じことだというのがこの連載の主旨ですからね。
最終的には左右の8の字で動かしたのですが、片側だけの話にします。片側のポールだけでもぐるっと行って帰ってくることができれば、その応用でハードル飛びの芸もスタート地点まで行かせることが可能です。パイロンを曲がったところでマテの動きをすればいいですから。
(実際には、ハードルと8の字走行は教えた時期はカブっていますが、話をシンプルにしています。ついでに言えば、私は最初や要所要所で簡単にデモンストレーションを見せるだけです。実際の訓練はできるだけ担当者にやらせていました。)
ペンギンにパイロンを回ることを教えるのに一番シンプルなのは、自分がバックしたままペンギンを誘導して一緒にポールを回ることです。パイロンに馴らすために、その練習をすることは必要です。でもこれだと、完全にオイデです。ではどうやって、イケの動きの行動形成をするか。
ステージとパイロンの位置関係を利用するのが、まず一般的なオペラント訓練でしょう。上の写真で言うなら、背景側からついて来させておいてペンギンがパイロンを回って池側に来たらホイッスル鳴らしてご褒美を与える。
しかしこの訓練ばかりを重視すると、最初の問題、つまり道具が置いてあれば勝手に行ってしまうという問題が出てきます。
ハトが一羽飛び出すと他のも真似して飛んじゃうように、群れの生き物は群れとして扱えることが必要です。
群れをコントロールするには、羊飼いの犬が羊を追うようなある法則性が必要となります。それが、身体意識と言われるものです。
問題提起だけで終わっちゃいました。また次回。