Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

ペンギン訓練の思い出その14 餌の投げ方のコツは、投げ方よりも取り方が大事。

餌の魚、というかご褒美の投げ方のコツ。

これは水族館のアシカトレーナーさんたちを見ているともう芸術的ですね。

「ピッ!」と投げる。これにつきます。

 

アシカは大食ですからご褒美を与える絶対数が多い上に、個別に与えることが多いからなのでしょうが、ペンギントレーナーがこれを体得するのは難しいようです。

 

オペラントトレーニングでは、良い行動とホイッスルやクリッカーを結びつけ、その後でご褒美をあげるので、おやつを与えるタイミングはそんなに気にしなくても良い、という概念があります。いい行動と餌の条件づけの橋渡しという意味で、ホイッスルとかのことを「ブリッジ」とも言います。

 

しかし、そう一筋縄でいかないのが動物訓練であり、特に行動形成です。

ご褒美を与えるタイミングやコツが必要ないのなら、アシカショーのあの芸術的な餌のスローイングも必要ないことになりますから。

 

いつものように前置きが長いですが、新人トレーナーは大抵、タイミングよくおやつを与えようとあせるあまり、つい腰バケツ付近に無意識に手をやってしまってしまいがちです。それが対象動物によけいな期待をさせることになって、動物がそこばかり気にして肝心のやってほしい行動をしなくなっちゃう。

 

上手いベテランさんのようにスムーズに餌を掴んで投げられないんですね。

では、新人さんとベテランさんは、どこが違うのでしょう。

動物は言葉の世界で生きていないから、こちらが向うを観察する以上に観察されています。そして動物は、体幹の動きをよく見ているようです。

経験則でしょうが、ベテランさんは肩から下だけ、もっと言えば手首のスナップだけを使ってお魚を投げます。新人さんもそれを真似ようとするのですが、上手くいきません。理由は、投げる時よりもむしろ餌を掴む時の動きがガサツだからです。

 

今までは腕だけではなく体全体を使うという話をしてきましたが、今度は逆に体幹は動かさないという話です。特に肩は絶対に上げず、ひじから下だけを使って餌を取るイメージであわてずに餌を掴むのです。

投げるのはもちろん手首のスナップを使いますが、こっちは割と誰でも気が付きますからあえて言うことでもないと思います。

 

肩を上げないで手だけを使うような体の使い方を「手の分割」と便宜上呼んでいますが、分割のコツがわかると気配を消せるようになる感じです。

ドラえもんの「石ころ帽子」みたいに、見えているのに気にしないような不思議な感覚です。

先ほどブリッジという用語を使いましたが、これとは別の意味で、肩は手と体幹をつなぐブリッジです。だから肩を動かさなければ、動物に不必要な刺激を与えないで済むのです。

 

肩を上げないためには単純に腰バケツの位置を低くするというのも有効です。しかし、バケツが低いとしゃがんだ時に餌をかすめ取られることがあります。

もう1つは、腰バケツを後ではなく、腰の横につける。アシカショーではその方が多いかも知れません。これだと手の甲側が常に上を向くので、餌をとっても肩が上がりづらいというメリットがあります。

 

 しかし、普段はあえて餌を掴む動きを見せておけばボディーランゲージのバリエーションが増えますから、私はやはり腰バケツは後で下げすぎないのが好みです。

 

そして、もっと細かい表現で腰バケツの餌を掴むことのコツをいえば、「お尻を掻くように不用意に後ろに手を回すのではなく、肩は下げたままでお尻に小指側の手の側面をくっつけるように手をまわしてから、手のひらは下を向けたまま肘から下だけを動かして餌をつまむ」となります。

その動きをやってみて肩を動かさない体の使い方がわかれば、投げる方はそう難しくないと思います。

 

そして「『ピッ』と投げる」。これもレーザーの身体意識の一つのバリエーションです。あくまで身体意識は体得が必要ですから、最後はもう、こうしか言えないんです。

長嶋さんが「ビュッ!と振って、カーン!と打て」と言うのも言ってみれば身体意識の話ですからね。

 

この、レーザーの餌の投げ方でイケやマテをさらに強化することまでできれば、もうあとは全て応用です。

イケ・マテ(止まれ)・オイデの3つが出そろいましたし、もうすぐペンギンシリーズは終わります。

 

今の動物トレーニングは主流のオペラント訓練に偏り過ぎているので、あえて動物との共通の身体意識を活用した一種の「フィジカル プロンプト(身体的誘導)」の話題に触れたくて書き始めたことです。普通にオペラントで説明できる芸(トリック)については、私以上に詳しい人がたくさんいますから。

・・・などと、早々と締めの言葉に入ろうとしている飽きっぽい私(笑)。

書き忘れたことを思い出したら、随時また追加します。