Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

「消失バースト」を恐れたらますます相手の思うつぼ。それが「逆調教」を生むから。

「消失バースト」という用語があると知るというだけで、なんだか動物訓練や人間関係でも感情的にならずにすむ感じがします。やっぱり用語は大切です。今回はその用語に関連性がある「逆調教」と同時解説にします。なお、このカテゴリーはあくまで我流解説なので、特に逆調教については行動分析学上でそういう用語があるのかすらよくわかりません(笑)。

 

消失バースト

  • ある問題行動を止めさせようと働きかけると、一時的にその問題行動がひどくなること。

逆調教(逆訓練)

  • 本来は躾ける(訓練する)側が、対象によってコントロールされてしまうこと。
  • また、対象を望まない方向に訓練してしまうこと。

 

解説

スーパーとかで、ものすごく泣きわめいて何かをねだっている、頑固な子供さんをたまに見かけますよね。あれは大抵の場合、親御さんの逆訓練によって生み出されたモンスター(笑)なんです。

 

子供が欲しいものをねだります。まだ子供が幼く小さい頃は意思表示ができたというだけで感激して買い与えてしまうものです。

しかし、すぐに子供の欲望にはキリがないことに気がつきます。

そこで親は「今日はダメよ。」と、やさしくさとします。

しかし子供はあきらめません。いつも以上に買って買ってとしつこくねだります。少し年が行っていれば、「今日だけ」、「これが最後」、「これ一つだけ」と、あらゆる手段で粘ります。これが消失バーストです。これに負けてはいけないのです。

しかし、大抵の親御さんはそんな行動分析学用語など知りませんから、つい、じゃあ今回だけと、買い与えちゃいます。

子供の方は、「一度はダメと言われても、粘ればくつがえせる」と学びます。これが逆訓練の始まりです。

 

次には、泣きます。その次は、買って欲しいものを絶対に離しません。その次は、わめきます。場合によっては、商品をぐちゃくちゃにします。

消失バーストは、繰り返すほどどんどん強くなっていきます。

そして、報酬を得るまでの過程が困難であればあるほど、報酬の価値が強く感じるものなのです。

 

親からしたら、「快与えれば(買い与えれば)」子供の問題行動はその場では消失するのですから、それが報酬となって子供にコントロールされているというわけです。

しかも、お互いに感情が伴う程やっかいです。子供からすれば、感情に訴えれば結果がねじ曲がることになりますから。

 

動物の例では典型的なのが、「さみしがって鳴けば飼い主が来てくれる」という逆調教ですね。これも一度成功すれば、次はもっとひどくなります。

 

だから動物でも人でも、躾は感情的にならない方が上手くいきます。

「今日は買わない」ということを事実として子供に教えたいのに、「今日は買わないからね!」と親が怒りの感情を出すと、子供にとっては「今この瞬間、この人は機嫌が悪くて怒っているからこう言っているんだ」という解釈になり、買わない日だという事を事実として受け入れなくなります。

 

そのように消失バーストとは感情との結びつきが強いですが、そうでない時もあります。簡単に言えば、物をなくして、もともとその物があった場所を何回も見直してみるのも、消失バーストです。

 

「事実を伝える」が少しわかりにくいでしょうか。では、刑事ドラマでよくあるシチュエーションの例を出します。

犯人が人質一人を連れて部屋に立てこもったら、警察は犯人を説得しようとします。これはまだ説得のできる可能性があるから「事実」ではありません。だから犯人のお母さんを連れてきて説得させるなど、まさに情に訴える余地があります。

それに対して、一時間後にセットした時限爆弾のスイッチを押して、それを警察に探させる方法が、「事実を伝える」の手法です。

 

まとめ
  • 消失バーストという概念は最初に知っておいた方が絶対に有利。
  • 動物の訓練においては感情に働きかけない方が事実を伝えるのに有効。これがクリッカー訓練などのオペラント訓練法の基本概念につながっていく。
  • 考えてみたら、消失バーストは良い目標に対する「努力」と同じかも。