ペンギン訓練の思い出その4 今度は少しだけ、マテ(トマレ)をやってみる。
ペンギンシリーズ前回の続きです。
一瞬でも、腕一本分の距離でマテ(というか足止め)ができたペンギン。さらに同じ要領で下がりながら次々にお魚を投げてあげることができれば、だんだん距離をとることが可能になってきます。
最近のショー中の一風景。このシーンで私の言っている理屈どおりに動いているわけではありませんが、手と足の同じ方が出るのは経験則でしょうね。
しかしペンギンの方もがっついてくるので、マテをさせたくても近づいてきたがります。
そこで、ある程度距離が離れたら、ぐっと正面からペンギンに近づいてやります。一瞬、ペンギンはひるんで止まります。ここですかさず、お魚を与えます。
また少しづつ、腕を残す感じで餌を与えながら下がり、距離ができたらぐっと近づきながら餌を投げます。
「3歩進んで2歩下がる」ならぬ、「3歩下がって2歩進む」という感じです。
そのように緩急をつけながら、人間が止まっているか近づいて来ている時は待っている方が餌が貰えるということを気づかせていきます。
普通は人間が動物にまっすぐ向かっていく時、動物側は威圧やプレッシャーを感じるものです。しかしここでは、えさを与えながら近づくことで足止めのプレッシャ-を与えると同時にプレッシャーにビビって逃げないよう慣れさせるのです。
ただしペンギンはすぐにお腹いっぱいになるという、いわゆる「強化のチャンスが少ない」生き物です。だからあえて隙を作って歩いてこさせ、お魚をあげずに、場合によってはそのまま練習を終了にしたりします。どうすれば魚を貰えるか考えさせると同時に、どうすればお魚を貰えなくなるかも考えさせるのです。
オペラント式の訓練では、セッションの最後は成功させて終わることが基本ですが、失敗で終わることも私はたまにします。これは専門的には「タイムアウト」というテクニックの応用です。平たく言えば、望まれない行動をした罰として動物を叱らない代わりに、ご褒美を貰える可能性を取り上げることが罰として作用することになります。ただし、これをやりすぎると訓練そのものが嫌いになるので、注意が必要です。
このあたりは初歩訓練のやり直しなので、ペンギンと言うよりもトレーナー側が自分の動きについて研究しなければならず、地味でイライラする期間です。
たき火をしようとしているのに火ではなく木をこする段階であり、種火がついたり消えたりしてイライラするような期間は、動物の訓練上では避けて通れないものです。
だいたいそもそも・・・
はっ!人生論になってしまいそうなので、自らタイムアウトします。
また次回。