Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

ペンギン訓練の思い出 その15 イケはオイデの応用だということ

もうほとんど項目だけでいいかなと思うようなことですが、以前アップしたレジュメの「イケはオイデの応用」だということ。もちろん、全ての動物トレーニングであてはまる訳ではありませんが、一つの考え方です。

これは私がペンギンに携わる前からあった、滑り台の芸で説明するのが分かりやすいでしょう。

 

滑り台というトリック(芸)を教える時、普通はどのように考えるでしょう。「滑り台を滑ったらご褒美のお魚を与える」というのがセオリーですね。

しかし滑り台のトリックでは、水の中では機敏に泳げるペンギンをあえて陸上の階段に登らせるということが前提です。だから階段の一番上の滑り口が大好きだというイメージになるように時間をかけて強化します。

それなのに滑り台の下流でお魚がもらえるとわかってしまうと、そこでウロウロと待ち構える輩が増えます。ジョーズみたいに。

するとペンギンは集団性がありますから、みんなあっという間に輩集団の仲間入りをしてしまって、誰ひとりイケニエとなって階段を登るペンギンがいなくなります。

こうして、滑り台を教えるはずが「水中のジョーズの群れ」という細かすぎて伝わらない芸が完成します。

 

では、それを防ぐにはどうするかというと、滑り台の上だけでご褒美を与えた後、「もうあなたの分はおしまい。また欲しかったらいったん滑り下りて、次に並びなさい。」という感じにもっていくのです。

もともとが、水の中を自由に泳いでいるペンギンに対を、陸上に呼び集めることが訓練の初期段階ですから、水に入ってしまえばすぐに陸上に戻ろうというスイッチが入ります。

だから結局、オイデの徹底強化の結果として、イケという合図が可能にになるわけです。

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 厳密に言えば、それでもペンギンはいつまでも滑り台の上にいたいですから、個体によって、またトレーナーの熟練度合いによって少し背中を押してあげるなどの物理対処は必要な時があります。

しかし、それをされても嫌がらずにまた戻ってくるということが「信頼関係」の一つのバロメーターです。

こんなことしたくらいじゃ嫌われない、と相手を信頼できるのが信頼の基本ですからね。

私?私が不用意にそんなことしたら嫌われる自信がありますから、できませんよ。