ASO田空 18 「吉松宮」はずっと気になっていました(ASO田園空間博物館 サテライト18)
阿蘇神社の有名なお祭りである「火振り神事」をご存知でしょうか。
夜の神社の境内で、参加者は荒縄にくくりつけた藁束に火をつけて振り回します。何の為かというと、お嫁さんを迎え入れる為です。お嫁さんを迎え入れる儀式の全体が「ごぜ迎え(ごぜん迎え)」です。
その「御前」とはつまり、お嫁さんに見立てた樫の木の枝のことなのです。それをこの吉松宮の裏山から選定します。
ずっと気になっていたこの神社。見つけた時は感動でした。
拝殿がプレハブのように中に入れるようになっているのは、ここでごぜ迎えの儀式を執り行うためなのでしょうね。
普段は入っていいものか躊躇するのですが、お賽銭箱が中にあったので勝手に入って参拝させて頂きました。
今入れたような、みずみずしい榊が添えられていました。
鈍感な私でも、ちゃんと掃除(=祓い)がなされている神社の清々しさは感じます。
さて、話は戻りますが、ごぜ「迎え」ですから、阿蘇神社の神主さんがここまでお嫁さんを迎えに来るということですね。では阿蘇神社の中のどの神様が、どのお嫁さんを迎えるのでしょう。
実はこれが不思議な話なんですが、健磐龍命の義理のお父さん、つまり阿蘇津姫の父である国龍神が、しばらく一緒に暮らして子供ももうけた天女を偲んで毎年代わりのお嫁さんを迎えるというのです。
そしてその天女が、阿蘇津姫のお母さんかどうかはっきりしないんです。
というのは、お母さんの「比咩御子神」はすでに阿蘇神社に祭られていますから。
罰あたり覚悟で簡単に言います。
国龍神が「天女を探して来い!」というので、仕方なく神に仕える者が樫の木の彫刻の天女を差出します。
国龍神は、「そうそう、このお嫁さんと改めて結婚式をあげて、一緒に暮らして・・・違ーう!これはただの木でしょ! 早く天女をつれてこいってば。」
という一年にわたる長いノリツッコミを毎年行っているということです。
それも本当の奥さんも祀られている神社で。
この話があまりに不自然だからなのか、このエピソード民間の伝承では国龍神ではなく健磐龍命の子孫である若彦神だったか、 新彦神だったかにすり替わっていることもあるんですね。かたや乙姫神社にはその名の通り乙姫伝説があり、この天女と微妙にキャラクターがカブるんです。
そんなこんなで大いに頭が混乱していたのですが、この吉松宮の由緒書きを見ると間違いなくごぜ迎えは国龍神、つまり草部吉見神(日子八井命)のエピソードだということです。吉見神だから吉松宮なのでしょうか。
そしてお嫁さん、つまり天女様もご祭神である比咩御子神の可能性が高いですね。
なんだか、ほっとしました。約一年前に浜神社を訪れたあたりから、ずっと疑問に思っていたことでしたから。