動物の訓練用語「行動形成」と「強化」と、その違い
あくまで我流の動物トレーニング用語解説、最初は「行動形成」と「強化」です。この2つは対になる言葉だと思うのです。
行動形成
- 教えたい行動を、あらゆる手段を使って形作ること。
- 動物には「言って聞かせる」ことができないので、具体的に行動をとらせないことにはその芸を覚えさせることは不可能です。これは「おすわり」の形のようにもともと勝手にできるものから、玉乗りのような曲芸まですべて共通です。
強化
- 行動形成がすでにできていることに対して、よりスムーズに確実にできるようにしていくこと。
- トレーナ側にとっては「反復練習」とほぼ同じことですが、動物からみて強化されたかどうかがポイントです。
<解説>
動物トレーニングで陥りがちな失敗は、「練習では上手く出来るのに、本番(人前)では言うことを聞かない」という現象です。
しかし、強化と行動形成の2つの意味がきちんと分かれば、これは単に行動形成が出来上がったレベルにすぎないということが理解できます。
よりスムーズに、より小さな合図で、より確実に、より環境を選ばずにできるようにしていくのが強化です。
特にショーの本番では、「一回の合図でできる」ということが肝心です。
おすわりにしろ、玉乗りにしろ、練習時間の後半にいくほど成功確率が上がるのが普通です。玉乗りの練習を3分するとして、最初の30秒が上手くいかなくても後半の2分30秒が上手くいけば、トレーナー側はそれなりに満足します。しかし、本番で見せることができるのは、普通は最初の30秒だけなのです。
「練習では上手くいくのに・・・」というのは、強化不足という不完全な状態なのに、もう完成したと勘違いしている時に出てくる言葉です。
これに対処するには、練習の為の練習をやめることにつきます。
例えば、どうすれば褒められるか、おやつがもらえるかを考えさせると同時に、どうすればおやつを貰えないかもしっかり考えさせるような訓練もするのです。
それも強化訓練の一環です。
「強化」と「おやつやって褒めること」はイコールではありません。それは強化の中の一つの方法です。
強化は「正の強化」と「負の強化」にわけられますが、まずはともあれ、「行動形成」と「強化」は分けて考えることが大切です。
すると、強化どころか「本番と同じ環境においての行動形成」すら、まだできていないことに気がつくこともあります。
宮本武蔵は言いました。
「千日の稽古を持って鍛とし、万日の稽古を持って練とす。」と。
もしかして、鍛が行動形成で練が強化という意味で言ったのなら、武蔵おそるべしです…。