Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

コンゴウインコのチビちゃんのフライングフォーム改造計画 その8

くぐり抜けるリングの数を増やしていく訓練です。

前回までで全部で3つのリングのうち、2つ目だけを観客席側から飛ばしてクリアできるという状態になっています。

 

まず、1つ目のリングに挑戦です。これは今の2つ目のリングをくぐるのとほぼ同じ軌跡で場所が変わるだけですから、できる能力はあるはずです。

しかし、このリングは構造上、本番の位置より下げることができないので、低い場所から少しづつ上げるという訓練ができません。

勝算は高いものの、一か八かになってしまいますから、ここに一番気をつかいました。本当に満を持しての挑戦で、一発目からクリアすることができました。

しかし、チビちゃんも慣れない軌道に力みが生じるらしく、これはとにかく疲れるのが早いです。疲れるということは、それだけ飛ぶのに嫌なイメージがつきます。だから一度クリアしたからといってそれだけを何度もさせず、初めの2回は一つ目のみを飛ばし、残りは体力づくりの為にも今まで通り2つ目のリングのみを通過させることで、しばらくは一つ目のリングをリラックスして飛べるならし期間としました。

 

そして次の段階は、1つ目と2つ目の連続くぐりです。

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写真を撮り間違えました。これは2つ目と3つ目。

 

リングが一つの時は、リングを頂点とした山なりの軌跡で飛びます。

しかし、2つになると間に水平飛行が入りますから多分、3つリングがある時と同じ軌跡で飛ぶのじゃないかと想像しました。

やってみると、まさに想像通りでした。

となると、ボーナスポイントではないですが、次はもう3つのリングに挑戦となります。そして、初回から成功しました。

 

あとはもう一つの点をクリアしたら、目標達成です。

その点とは、まだスタート地点が観客席からですから、これを舞台側からにすること。

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この止まり木にいるチビちゃんの位置が、今までのスタート地点です。

 

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この止まり木の位置から飛ばして、クリアできたら目標達成です。

 

今までの進歩の遅さからは信じられないくらいの早さで一気にリング3つまでこぎつけたのですから、もうこれでシリーズ完結かと思いました。

実際、一度はステージ上から完ぺきに成功しました。

 

しかし、その次の日。もうテストで言ったら確かめ算、スポーツで言ったらウイニングランくらいの気持ちでやってみると、2つ目のリングの外側を通ってしまいました。

時間をおいて何度やっても、2つ目だけ外にふくらんで避けます。

スタート地点を観客席に戻すと、3つともクリアします。

試しに、スタートはステージ上で、リングの1つ目と2つ目だけしたら、これも成功します。

他も試すと、スタートも含めた4つのポイントのうち、どれか一つをなくせばできるという不思議な状態になりました。

というわけで、今回が完結編とはいきませんでした。

 

このパズルのような問題を、どうクリアしていけばいいのか。

まず思いついたのは、しばらくは2つ目のリングだけをなくして練習するというアイデアです。というのも、2つ目がない状態が一番本番の軌道に近いからです。

不思議なことに、リングがない時はほとんどリングの場所を通るのに、リングを設置するとあえて避けるように見えるのです。

 

もうこのレベルになると、スタミナ不足から失敗するのは避けたいので、一回飛ばしたら3~4分休ませて、5回飛ばすのにも20分くらい費やすという感じです。

インターバルを開けすぎるとモチベーションが下がるらしく、一日の中でちゃんと訓練できるのは、この20分だけです。

貴重な5回のフライングを全てこの練習にそそいで、三日経過しました。

いよいよ、真ん中のリングも設置。

結果は・・・

 

・・・見事に真ん中の一つだけ避けやがりました。

とほほ。

 

こうなると、次の作戦は・・・次回に続きます。

コンゴウインコのチビちゃんのフライングフォーム改造計画 その7

今回は結果からお伝えすると、少しづつ距離と高さを伸ばし、とうとうチビちゃんが中央のリングを、本来の高さでクリアできるようになりました。

これも前回のレベルから、4~5日はかかりました。

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いつもの使いまわし写真ですが、この高さのリングをクリアしたんです!

 

ここまでのレベルになってくると、鳥も一回のフライングで相当に体力を使うようで、何回も連続しての訓練はできません。

初期の頃の「タップ」は野球で言うならバットの素振りのようなもので、短時間に回数をこなすことができましたが、もうここまでくると、合図を待ってましたとばかりに飛ぶのは最初の2回くらいです。

 

そして、飛びたい、飛びたくないの意思がはっきりと伝わるような感じになってきました。チビちゃんがやる気がある時はしっかりリングを見つめ、まだやりたくないという時にはそっぽをむくのです。

 

もともとが今回の一連の訓練の狙いは、タイトル通りの「フライングフォーム改造計画」です。その意味では確かに今までとは違って、チビちゃんがやる気がある時には、こちらの手にも鳥が踏み切る時の力強い反発を感じます。

特に、距離が短いままでリングをくぐり抜けるには、トレーナーの腕の振りで「とばされる」のではなく、鳥が能動的に動いて自ら飛び立つようでないと狙いが定まりません。

しかし、今回ほど距離と高さが離れてくると、多少こちらが飛ばしてあげる方が鳥の負担は少なくなるはずです。マイケルジャクソンとかが、コンサートでステージの床から飛び出してくるような装置を、トレーナーの腕が肩代わりする感じですね。

 

これをチビちゃんがまだやる気のある最初から、ちょっと強めにやってみました。それによってフライングの負担が減れば、2回で疲れるところがせめて4回くらいは平気になるのではないかと。

 

最初は割と上手くいきます。

しかし、それをやっているうちについ、ちょっとくらい鳥が疲れていても、こっちが飛ばしてあげればできるのじゃないかと欲が出てきます。そうして結局、元の木阿弥、後ろの方に体重をそらして、エビのようにのけ反るようになってしまいます。

そうなったらまた前回のレベルに引き落とし、自発的に飛ばし、まあこのくらいかなと折り合いをつけるように腕の振り加減を決めていきます。

根気勝負ではありますが、本来動物の訓練はこのように3歩進んで2歩下がるようにして上手くなっていくものです。これまでの訓練の足跡から簡単に2歩下がれるようになったのが大きな成果だ、と、自分にいいきかせます。

動物トレーナーを悩ませる大きなジレンマの一つである、たくさん練習をしたくてもできない、いわるゆる「強化のチャンスが少ない」ということを存分に味わう期間だと割り切ります。

 

とまあ、内面描写はさておき、そんなこんなで疲れる前の3~4回は確実にできるようになってきたので、いよいよ次回からはリングの数を増やすことに挑戦です。