Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

コンゴウインコのチビちゃんのフライングフォーム改造計画 その7

今回は結果からお伝えすると、少しづつ距離と高さを伸ばし、とうとうチビちゃんが中央のリングを、本来の高さでクリアできるようになりました。

これも前回のレベルから、4~5日はかかりました。

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いつもの使いまわし写真ですが、この高さのリングをクリアしたんです!

 

ここまでのレベルになってくると、鳥も一回のフライングで相当に体力を使うようで、何回も連続しての訓練はできません。

初期の頃の「タップ」は野球で言うならバットの素振りのようなもので、短時間に回数をこなすことができましたが、もうここまでくると、合図を待ってましたとばかりに飛ぶのは最初の2回くらいです。

 

そして、飛びたい、飛びたくないの意思がはっきりと伝わるような感じになってきました。チビちゃんがやる気がある時はしっかりリングを見つめ、まだやりたくないという時にはそっぽをむくのです。

 

もともとが今回の一連の訓練の狙いは、タイトル通りの「フライングフォーム改造計画」です。その意味では確かに今までとは違って、チビちゃんがやる気がある時には、こちらの手にも鳥が踏み切る時の力強い反発を感じます。

特に、距離が短いままでリングをくぐり抜けるには、トレーナーの腕の振りで「とばされる」のではなく、鳥が能動的に動いて自ら飛び立つようでないと狙いが定まりません。

しかし、今回ほど距離と高さが離れてくると、多少こちらが飛ばしてあげる方が鳥の負担は少なくなるはずです。マイケルジャクソンとかが、コンサートでステージの床から飛び出してくるような装置を、トレーナーの腕が肩代わりする感じですね。

 

これをチビちゃんがまだやる気のある最初から、ちょっと強めにやってみました。それによってフライングの負担が減れば、2回で疲れるところがせめて4回くらいは平気になるのではないかと。

 

最初は割と上手くいきます。

しかし、それをやっているうちについ、ちょっとくらい鳥が疲れていても、こっちが飛ばしてあげればできるのじゃないかと欲が出てきます。そうして結局、元の木阿弥、後ろの方に体重をそらして、エビのようにのけ反るようになってしまいます。

そうなったらまた前回のレベルに引き落とし、自発的に飛ばし、まあこのくらいかなと折り合いをつけるように腕の振り加減を決めていきます。

根気勝負ではありますが、本来動物の訓練はこのように3歩進んで2歩下がるようにして上手くなっていくものです。これまでの訓練の足跡から簡単に2歩下がれるようになったのが大きな成果だ、と、自分にいいきかせます。

動物トレーナーを悩ませる大きなジレンマの一つである、たくさん練習をしたくてもできない、いわるゆる「強化のチャンスが少ない」ということを存分に味わう期間だと割り切ります。

 

とまあ、内面描写はさておき、そんなこんなで疲れる前の3~4回は確実にできるようになってきたので、いよいよ次回からはリングの数を増やすことに挑戦です。

コンゴウインコのチビちゃんのフライングフォーム改造計画 その6

何とか、ゴール地点が見えなくてもリングに向かって飛んでくれるようになったチビちゃん。

しかし、ここからまた距離が伸ばせません。観客席は足場が悪くて、私が上手く動けないのです。

 

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絶妙に邪魔な位置にある手すり。

 

自分の手からスタートした鳥を、リングの反対に回って自分でキャッチするのですから、足元を見ている余裕はもちろんありません。

 

リングをくぐる練習で大切なのは、最初はできるだけリングが広く見える突入角を作ってあげることです。つまり、まず真正面からくぐる練習をして、だんだんスタート側の距離の方を伸ばします。十分に距離ができたら、少しづつスタート地点を横にずらして角度をつけていくのです。

これを、鳥に悟られることがないくらいにほんの少しづつ距離を伸ばし、角度をつけていけば・・・理想を言えば、いつの間にかブーメランのように遠くのリングをくぐって帰ってきてくれるようになるはずです。

 

しかし、邪魔な手すりがありやがる上に、足元は階段です。この手すりより手前で飛ばす為には、一気に階段で6段分下から、そして約2m横からスタートする必要があります。

これまでの訓練同様、一か八かはしたくないので、リングの方をほんの少しづつ上にあげてゆくという方法をとらざるを得ませんでした。このデメリットは、鳥が疲れやすいということ。こちらがちょうどよい位置にフライを上げるように投げてあげるのは難しいですから、自分の筋力でバタバタと上昇しないといけないからです。

しかし一方でこれは、鳥にとっての良い筋トレになるという側面もあります。

そんなこんなで、なんとか手すりの手前から飛べるようになったのは、前回の訓練からさらに一週間が経過した頃でした。

 

この仕事をしているとよく、「動物相手に根気が必要でしょう」と言われますが、毎日ほんの少しずつでも収穫があるので、変化を楽しんでいるんですね。釣りは短気な人の方が向いているといいますが、なんとなくそういうものだろうなと思います。

 

ちなみに、このチビちゃんの訓練シリーズを書き始めたのは前回の内容くらいの頃だったと思います。書き始めたはいいものの、最初の壁に突き当たり、本当にショーで行っていた頃のレベルに戻るのだろうかと思っていました。

なんとかその壁をクリアできたところで、また今回の壁ですから、内心はかなり不安でした。

しかし本来、その動物ができる能力を見せるのがショーですし、できないことを無理して行うのも本末転倒なので、できなければその能力に見合った演出を考えれば良いとも考えていました。

 

そんなこんなで、まだまだ先は長いなあと考えました。