クラウンとコンシェルジュ
自分語り2です。
ブログの最初の方でハチローの紹介を書いた時と、すこし内容が重複しますが・・・
私は、アニマリュージョン!立ち上げの前の約3年間、動物ショーのステージから遠ざかっていた時期があります。
心臓手術からくる体調の悪さもありましたが、当時のショーは方針を変えて動物より人間の演劇中心でやることになってしまい、私はその構想外だったんです。動物訓練とショーが天職というか、それ以外に取り柄がない私にはもう干されたといってもおかしくありませんでした。
実際、行き場がなかったんです。内示を受け、私の為に新設されたのが「園内パフォーマー」という部署でした。職場は「園内」で、エリアも決まっていないし、仕事も決まっていないんです。直属の上司に聞いても、「さあ。」というくらいでした。
そこでさらに上の、部署を新設した立場の人に何をしたらよいのか聞くと、「宣伝をしなさい。例えば、ショーのプラカード持って園内を歩くとか。あと、おもてなしをしなさい。入り口に立っていて、いろいろ聞かれたら答えるとか。そうだ、コンシェルジュになりなさい。しまったな。園内コンシェルジュって部署名にしとけばよかった…」
…今、思いつきでしゃべってませんか? とは思いましたが言いませんでした。
今はもうその方はカドリーにはいないのですが、とりあえずお願いして、これも行き場がなかったコンゴウインコ2羽とシェパードのハチローが私の担当になりました。
また、最終的に一人じゃあんまりだということで、もう一人同僚がつきました。
この同僚は私と違って優秀で、動物部署の管理指導兼任でした。
こんな状態ですが、ハチローとインコがいれば、もうどうにでもなります。
ほとんど一日中入場口に張り付いて、お客様に声をかけ、インコの腕のせて写真を撮ってもらったり、ハチローと輪投げをしたり。楽しい毎日になりました。
「コンシェルジュ」という言葉だけは妙に頭に残っていました。おもてなし案内係。その後たまたま本を読んで知ったのが、アメリカにはクラウン養成所があって、そこで同じカリキュラムを学ぶのがテーマパークのコンシェルジュだということ。
つまりクラウンになるため、はコンシェルジュの要素も必要なんですね。
本当に一流のコンシェルジュとなると、相手の服装や雰囲気で国籍を見極めて、その国の言葉で話しかけるそうです。話しかけられた相手は、「なんでわかっちゃうの?」と、それだけでその人のトリコになっちゃう。そういう観察眼や、能動的なサービス精神がクラウンにも絶対必要だということですね。
コンゴウインコって、結構ごっついんです。こわがる子供も多いです。
私は、それこそ行動分析学的な心理学も応用して子供さんに接するので、そんなインコを腕に乗せてやると「うちの子がこんなことできるなんて!」とびっくりされることもありました。もちろん失敗して、こわがって泣いちゃう子もいましたが。
ハチローの輪投げも、子供さんを誘うと、無料のゲームなのに恥ずかしがってやらないんです。街頭で無視されるチラシ配りの人とか、いますよね。
これも心理学ゲームです。お子さんとの駆け引きが楽しくて楽しくて。
とにかく、なぜだか知らないけど、この期間の私は「圧倒的な現場接客経験」が欲しくてたまりませんでした。
特に私は、信じてもらえませんが超内向的な性格で、動物が横にいてくれるからこそ舞台に立てていたような人間でした。今でも、お客様の前と普段のギャップを自分でも感じますから、せめて相手に自分だけ嫌われていると思わせないように、挨拶だけはしっかりする努力をするというほどの小心者です。
この時期に徹底的にお客様に話しかけるという経験がなければ、今のアニマリュージョン!の演出にはとても耐えられなかったでしょう。
特に、「プレショー」という、ショー3分前に舞台に出てきて無言の前説みたいなパフォーマンスは、最初のつかみ部分でスベる確率がコンスタントに25%くらいあります。まあ、ハードルを下げるという意味もありますから、スベるのもショーの演出上はありなんです。でも、最初にボディブローをくらってから約40分のショーをするって…
こんなこともあって、やっぱりクラウン化してきていると思います。
「干される」は、言葉は悪いですが、もちろん干される方にも原因がありますし、私を干した人たちには感謝しています。十分、乾きましたしね。
ごっつい私を見て泣きそう? ま、おさえて おさえて。