クリッカーは、いつか卒業しないと一つの用途にしか使えないという矛盾
トリーツと言われる、いわゆる「ご褒美のおやつ」も、首輪もリードも、全部訓練補助ツールです。なぜ、わざわざそんなわかりきったことを改めて書くかというと、クリッカートレーニングをやり始めたら、クリッカーは使い続けないといけないという勘違いをする人が意外といるからです。
特に動物園水族館でショーをしたりトレーニングをしたりしていると、使えるから使ってしまいます。
でも、犬の訓練競技会とか、ドッグダンスとかでは、本番ではこれらは使ってはいけないんです。器具の使用は反則ですからね。いつかは卒業しないといけないけど、最初はあると重宝するもの。自転車の補助輪みたいなものですね。
ちょっとわき道にそれるかもしれませんが、自転車の補助輪は、ずっと使うと副作用があるんです。カーブの時に内側に車体を傾けると、補助輪が邪魔して転びそうになります。だから、リーンアウトというんでしょうか、カーブの時には少し外側に体重をかける必要があります。この体重移動を覚えてしまうと、もう怖くて補助なし自転車なんか乗れません。だから、過去にヒグマやニホンザルに補助なし自転車を教える時は苦労しました。両方とも、子供の頃は三輪車に乗っていたからです。
さて、クリッカーにも似たような副作用はあるのでしょうか。
私は、あると思います。というか、クリッカーを1つの用途にしか使わないで満足している人って、結構多いんですよね。それはそれで一つの活用法ではあるんですが、例えば、コーリングにしか使わないとか。
コーリングは、「呼び寄せること」で、「これはいい行動をとったらクリックしてご褒美」、という鉄則に反して(?)、先にクリックしちゃって来たら餌を与えるということです。
ここで満足すると、もう、「マテ」は教えられないことになります。待った時にクリックしたら、来ちゃうんですから。
だから、コーリングができるようになったら、そこに何か合図をカブせないといけません。普通は「オイデ」というコマンドですね。遠くにいる犬に対して、クリック音を聞かせます。犬がこちらに向かって来ます。その時に、そう、それがオイデだという気持ちで「オイデ」というコマンドを乗せます。すると、オイデというコマンドを覚えるので、ここでいったんクリッカーは卒業です。
(ただし、コーリングは少し特殊なので例えには向かないかもしれません。)
次に、分かりやすいのは例えば台に乗せるという芸を教えること。オイデのコマンドで、犬が来ます。低い台が自分の目の前にあり、その台に乗ったら、クリックしてごほうびを与えます。
コマンドは何でもいいのですが、乗っている間に「ダイ(台)」と唱えて、すぐにクリック、ご褒美。これで、犬が下りないように少しずつ離れたりしながら餌とクリックを繰り返し、最終的には「ダイ」のコマンドだけで台に乗って自分から降りないようになれば、またクリッカーは卒業。
次は「お手」を教えるか、「ちんちん」を教えるかお任せしますが、オイデとダイがちゃんとコマンドによってクリッカーとお別れしていないと、新しいことは教えることが出来ません。
例外は、道具が合図になっている場合。目の前に玉乗りの玉が出てきたらそれが乗るという合図だったり、自転車だったり。
これらは専門家にとってはきっと当たり前のことなんです。私は昔、専門家のみなさんが当たり前すぎて解説しないことに対して疑問がたくさんあったので、つい、いろいろ書いちゃうんでしょうね。
(ただしもちろん、水族館のイルカショーとかはチームで取り組むものだからバラつきが出ないように無機的な合図を作ることが最終目的で、それにはホイッスルなどは絶対必要だということもわかります。
だからもちろん、クリッカーを使わなくても大丈夫な犬の訓練士の方が優れているなどとは思いません。ただ、「違うだけ」です。)
ん? クリックした?
シーナのトレーニングか・・・
(談:ゴンちゃん)