Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

ペンギン訓練の思い出 その2 ペンギンに差し込まれるという状況を何とかしないと

ペンギン訓練のお話の続きです。

 

当時の芸は、平均台渡り・ハードル飛び・滑り台(ウォータースライダー)・水上浮島渡り・水上くす玉割りだったと記憶しています。ほとんど現在の主流の行動分析学的な知識を活用することなく、よくもまあこれだけ芸になっているなと思っていました。

 

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 水上浮島渡り。昭和世代には、芸能人水泳大会でお馴染みのあれ。

 

 

理屈やマニュアルがないままに、オープニングスタッフの努力と熱意と、もっと言えばそのクセと個性で確立されたショーだったので、新人さんがやって崩れてしまったら、もう立てなおしがききませんでした。

 

ペンギンは、特に群れで行動するし、ほとんど群れのまま訓練するので「オイデ」に対して我先に餌をもらおうと足もとに群がってきます。5羽くらいまでならまあ何とかなりますが、8羽を超えたあたりで、人の裏側にまわったり、群がるのをあきらめてわざと遠くにいって餌を投げてもらおうとしたり、悪知恵を働かすやつが出てきて収拾がつかなくなります。

 

そういった言う事を聞かないペンギンもいるというのもかえって面白いのですが、パフォーマーとしての芸の道で考えると、ハプニング笑いに頼りすぎるようでは半人前以下です。ペンギンという親しみのある生き物の能力や人間との意思疎通の絆を見ていただきたいのに、ただの笑い者にするようなものですから。

ましてや新人さんが、ハプニングを笑いに変える力量もあるはずがありません。

そんなペンギン達を、10羽前後の群れのままでショーに出演させているのですから、担当者の気苦労は相当なものです。

 

これはもう、基本の基本からやり直すしかありません。群れのままコントロールできるようになるのが最終目標だとしても、初期の訓練しなおしは一羽ずつで行いました。

これまでのペンギンの気持ちになって考えると、「人間の足という木の根元に行けば、上から魚の実が落ちてくる」という感じです。

これに「おいで」というコマンドが乗っかっていますから、オペラント条件づけでいう「コーリング(呼び寄せ)」だけはかろうじてできているという状態です。

 

ペンギントレーナーは腰の後ろに魚が入ったバケツ(以下腰バケツ)をつけています。水族館のアシカショーのお姉さんとかと一緒ですね。

ペンギン達にご褒美をあげようと、腰バケツに手をやった瞬間、一斉にペンギンが群がってきちゃいます。だから、いい行動をとった時にあげるべきご褒美が、いい行動をやめさせる結果になっちゃうという矛盾がありました。

せっかくペンギンが正面に集まって来るのに、腰バケツに手をやった瞬間に距離が取れず差し込まれてしまう。あわてて急いで餌を掴もうとするほど、ペンギンも急ぐ悪循環。

 

この問題をどうクリアするかが最初の課題です。

アシカだと、「台つけ」つまり基礎訓練での低い台に乗せて待たせた状態でご褒美を投げてやることがでるでしょうが、ペンギンには不向きです。これはもうオペラント条件づけ、つまりクリッカーやホイッスルの音が餌を貰える合図となることを教える、その前段階の話です。

 

ひっぱっといて、次回に続きます。