「1,2,3、いっぱい」という数え方
昔々、ソニーのウォークマンのCMに出ていた「ブッシュマン」を覚えておられる方っていますか?固有名詞では「ニカウさん」。
カラハリ砂漠の先住民族です。「ブッシュマン」という名称が差別用語にあたるので「コイサンマン」と名前が変わったりしましたが、「カラハリの叢林に住む自由人」と言う意味で、同じ自由人の私はあえてブッシュマンと呼ばせて頂きます。
ブッシュマンの数の数え方が面白いんです。これが今回の題名。「1」と「2」と「3」と、「いっぱい(たくさん)」しかないと言うんですね。
理由は、「狩りに出たら獲物は、単独か、ペアか、親子3頭か、群れか、しかないから4以上の数字は意味がないから」ですって。
でも多分、これはだいぶん話を盛っていると思います。もっと頭のいい人たちのはずですから。
ただ、この考え方が私には動物トレーニングの時の動物の時間などの概念にぴったりだなと思っています。動物トレーニングって、間が非常に大切なんです。
犬に、「おすわり」と命令します。従おうかどうしようか考えてから座るようでは全然だめです。それは考えさせてはいけないんです。
ちなみに、なぜかと言うと犬はオオカミの子孫であり(持論です)、チームワークで狩りをするのに、ボスに逆らって獲物の誘惑に負けて勝手に飛び掛かっちゃどうしようもないからです(これも持論です)。
でも、命令される側にとっては、これは突然すぎます。例えば、会社で自分が椅子に座っていて、向かいのデスクに上司が同じように座っているとします。ここで突然、自分に向かって「立って」って言われたら、反射的に立てるでしょうか。一秒で立てる人は、まずいないでしょう。多分、3秒以内くらいです。
逆に、4秒以上はもう上下関係としては不合格です。というか、4秒で立たなかったら、もう気まずくて逆に立てないと思います。「え?ど、どうしてですか?」とか、聞き返すはずです。もしくは、自分に言われたのか確認する為、周りをきょろきょろしたりするでしょう。それは、従おうかどうしようか考えている状態です。
だから、普段のコマンド(お座りとかの合図)では3秒くらいは待ってあげていいんです。
でも、例えば訓練競技会とか、アジリティとか、何か命令される前提の時はもう1秒以内で言うことを聞かなくてはいけません。時間の間合いは、相手の集中度によって変わるんです。
新人さんに、「普段のコマンドは1秒で動く前提なんだけど、3秒までは待っていいよ。」なんて言うと、もう意味が解らないんですね。当然ですが。
大抵、3秒までは様子を見て、4秒過ぎてから叱ったりします。
ここで、「1,2,3、いっぱいルール」が適応されます。4秒過ぎたらもうそれは「いっぱい」時間が経っているから、なんで叱られたのか全く分からないんです。
逆に焦って2秒くらいで「ダメ!」と叱ったら、今まさに座ろうとしたことに対して叱られたことになっちゃうから、これで少しトラウマを与えちゃうんですね。
この3秒内のせめぎあいというか、観察というか、これでトレーナーの腕前が分かっちゃうくらいです。さらにこれがジャンプとかの技になると、ぐっと屈みこむテイクバックがあるから、よけいややこしいんです。
次に、おすわりの状態。お座りをさせて3秒以内に解除してばかりいたら、犬は「お座りって4本足の状態から後ろ2本の足を折ってお尻をつけることだな」って考えます。いいって言うまで座り続けるのが本当のお座りです。
これも、同じ原理で、4秒以上できたら、あとは「いっぱい」ですから、3秒以内で解除するより格段に強化されます。
うまく強化出来たら、あんまり声はかけない方がいいんですが、強化でできてないうちは、3秒くらいで「そう、おすわりだよ」などと声をかけたりします。
ただ、最近知人(というか、大尊敬する動物トレーナーTさん)から得た情報では、「1,2、いっぱい」らしいんです。まあこの場合、合図と行動の相関関係というよりは、行動とご褒美や罰の関連付けという意味合いが強そうですが、それこそ行動分析学、いや、古典的条件付け、つまりパブロフの犬的な実験で証明されたとか。
でもまあ、動物の体内時計と人間が作った秒の長さが一致するわけがないですから、私は少し心の中で早目に数えた1,2,3でいいと思うのです。リズム的にも。
あと、どうもですね、コンゴウインコが3つまでのひまわりの種なら、「あれ?2つだけ?」とか、分かっているフシがあるんです。
4つはどうも、分かっていない気がします。
ご一緒に、1,2,3、「ダ~!」
…写真、使いまわしですみません。