Mr.トーマのアニマリュージョン!ブログ

アニマリュージョン!は熊本県阿蘇のカドリー・ドミニオンで行われているファンタジックアニマルショーです。このブログではショーだけに関わらず、広く地域情報や動物訓練に関しての話題を提供しております。

「どうやって教えるんですか?」考 その1

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動物ショーの仕事をしていると、「どうやって芸を教えるんですか?」とお客様に聞かれることがあります。
この質問には、毎回言葉がつまります。芸の教え方を秘密にするつもりは全くありませんが、一言では言い表せないくらいたくさんの要素があるからです。絶対、長くなります。(というわけで、今回は写真なしの長文です。あしからず。)
 
20年以上前の犬の訓練を始めたばかりの頃は、まだこの質問も返答しやすかったです。「まず、ボールやフリスビーなどで遊んでやって大好きなおもちゃを作って、それをご褒美に芸を教えます。」と言っていました。
当時は世の中もまだ、犬の訓練において「エサで釣るのは本当の信頼関係ではない」という考えが主流だったように思います。警察犬用の訓練によって訓練士の資格を得た人が家庭犬訓練もするのですから、エサで訓練などして犯人にエサで釣られたら大変、という考え方だったのかもしれません。
 
私の動物訓練のキャリアはクマが最初ですから、ご褒美におやつをあげて芸を教えるスキルはありました。しかし、犬はどうしてもエサではなく信頼関係で教えてみたかったのです。
私は、思い込むと極端です。エサで釣らないと言っておきながらエサの前に座らせたりするのもアンフェアな感じがして、最初に訓練したシェパード犬は食事前のマテもかけたことがありませんでした。
エサを使わないで、ひたすらボールやディスクで遊んで褒めて育てたシェパードは、芸はメキメキ覚えましたが、落ち着きのない超ハイパー犬になってしまいました。
 
このあたりのくだりは、過去にこのブログで書いたことがあったと思います。まるで苦行をやりつくした末に苦行を捨てた瞬間、悟りを開いたお釈迦様のように、と言えば大袈裟ですが、ただ褒めることをやりつくした結果、これではいけないと悟ったのです。
「エサで釣ろうものなら信頼関係にヒビが入る」などと言っているうちは、まだ相手を信頼していないということです。お互いを信頼しあうのが「信頼関係」なのに、自分が相手を信頼しきれていないのです。
お釈迦様を例えに出したついでに、やはり全ては中庸、つまりほどほどのバランスが大事なのですね。
 
そしてバランスのとれた訓練法を模索していたある日、北九州の有名なドッグトレーナーのA先生セミナーを受ける機会がありました(と言っても、これも今から10年も前の話です)。
このセミナーで私は目からウロコが何枚も落ち、結果として現在の訓練法に落ち着いたわけですが、すでに長文なので次回に続きます。