動物の訓練で使う「スモールステップ法」とは?
前回、「行動形成」という用語にふれましたが、教える芸(トリック)が難しくなるほど行動形成も難しくなります。
そこで必要となるのが、スモールステップという手法です。
スモールステップ法
- 最終目標の行動形成の前に、訓練課程を小さな段階に分けて確実に教えて行くこと。動物の訓練手法の一つ。
解説
例えばクマに自転車乗りを教えたい時。人間の子供のように、いきなり乗せて後ろから支えてあげられればいいのですが、まず無理なのは当たり前です。
そこで必要なのがスモールステップ法。
そこに行きつくまでの過程を、考えつく限り小さな段階に分けます。
- まず、自転車ではなく三輪車を用意する。
- ハンドルに手をかけることを教える。
- サドルに乗ることを教える。
- サドルから足をおろして、またがる形になることを教える。
- 下ろした足を、片方ずつペダルにかけることを教える。
・・・このように一つづつクリアさせていき、最終的には補助輪なしの自転車に乗れるまでになるわけです。
このステップを考えるのが芸の完成までのスケジューリングにもなります。また、どんなステップを考えつくかがそのままトレーナーの力量につながるとも言えます。
しかし、最初の段階で教えたことが、次の段階での悪い副作用になることがあります。
ハンドルに手をかければおやつが貰えると理解したクマは、次にサドルに乗せようとしてもハンドルばかりを意識してしまってなかなか乗ってくれません。
だから、いったんハンドルに手をかけることを忘れさせる必要があります。
また、苦労して三輪車乗りができるレベルまでいくと、補助輪つき自転車に移行する時にペダルの位置が違うのでまた苦労します。
さらに、最終段階である補助なし自転車と、補助輪つきの自転車では体重移動の仕方が違うので、補助輪つき自転車でうまくカーブを曲がれるようになればなる程、後で苦労することになります。
そういった副作用があると理解した上で、どういったステップを踏むかスケジューリングをすることが大切です。
まとめ
- スモールステップは、芸の完成までの具体的スケジューリングに等しい。
- どんなステップを考えつくかがそのトレーナーの力量とも言える。
- 各ステップは「良い癖」と同時に、「悪い癖(完成にいたるまでの副作用)」も同時に教えることになるから、正→反→合のくりかえしで進むもの。